ギャザーの手法と折紙を掛け合わせることで生まれた、一枚の長方形の布に紐を通して引くだけで服の形に立ち上がる作品群。

アトリエ391の高尾智裕さんと共同でYUIMA NAKAZATOのオートクチュールの幾何学設計を行った。最初にYUIMA NAKAZATOからきた相談は、長方形の布に並行配置で紐を通して引くだけでシワを寄せて服の形にすることができないか、というものだった。
布にシワをつくり立体化させる既存の加工方法としてはプリーツ加工があるが、複雑なパターンをつくるには台紙を作成して生地を挟んで固定し処理するため、手間がかかり量産も難しい。一方で、布は加工せずとも偶発的にシワが寄るだけで規則的で美しいパターンが現れることがある。モナリザの服の袖に描かれているシワが折紙の「ヨシムラパターン」になっているのは有名だし、そもそもヨシムラパターンやミウラ折りをはじめとしたいくつかの折り方は薄い板やシェルの座屈パターンの研究を通して発見されている。これを利用できないだろうか。一枚の布に複数の紐を通し、通す孔の位置を工夫することで布の折れ曲がりを制御し、紐を引くと一挙にパターンが現れるという手法を考案した。いくつかの折りパターンがこの手法でつくれることを確かめ、コンピュータで折紙として設計し、生成したパターンを孔と紐に変換した。
今回はデザイナー・パタンナーとの形状のやり取りがスムーズになるよう任意のポリラインから折紙が設計できるプログラムを作成した 。折紙の頂点における折り角度の関係を実装することで、コンピュータの画面上にジグザグのポリラインを引きつくりたい服の概形線を描くとその奥行き方向に自動的に展開可能な折紙が生成されるものである。オンラインで打ち合わせをしながら、共有画面上で線を引き、リアルタイムで生成した展開図を出力して送った。

2022年1月、「YUIMA NAKAZATO Couture LIMINAL」として、パリでのランウェイ・ショーを通じて発表された。
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